本記事は公式ホームページで公開していた内容を移行したものであり、設計・施工では個別の設計図・仕様書・現行基準を優先してください。

目次

  1. 継手とは何か|鉄骨柱における基本概念
  2. 柱仕口の種類と構造
  3. 柱継手で使用される鋼材(SS400・SN490・STKR400・BCR490など)
  4. 溶接による柱継手の構成
  5. ダイヤフラム構造(内ダイヤ・外ダイヤ)
  6. 裏当て金の役割と使用条件
  7. 梁接合部との関係(仕口条件)
  8. 超音波探傷試験(UT)の概要
  9. 施工時の注意点(隅肉溶接・アンダーカットなど)
  10. まとめ|安全で信頼性の高い柱継手を実現するために

継手とは何か|鉄骨柱における基本概念

鉄骨構造における「継手(つぎて)」とは、鉄骨部材を長手方向に継ぎ合わせる接合部のことを指す。特に柱は建物の主要構造部であり、1本の鋼材だけで全層を連続させることが困難なため、一定階ごとに継手を設けるのが一般的である。

継手は、次のような条件によって位置が決定される。

  • 建方工程の区切り
  • 鋼材の運搬可能寸法
  • 工場加工の限界長
  • クレーン能力など施工条件

鉄骨柱の継手は、構造性能を左右する重要部位であるため、施工方法・溶接種類・材料・検査などが細かく規定されている。

また、継手は「工場継手」と「現場継手」の2種類に分けられる。工場継手は品質が安定しやすいが、運搬寸法の制約を受ける。一方、現場継手は施工環境の影響を受けやすく、施工管理が特に重要となる。

柱仕口の種類と構造

「仕口(しぐち)」とは、柱と梁が交わる接合部を指す。柱仕口は、梁の応力を柱へ適切に伝達するための構造であり、建物の剛性・耐震性を左右する重要部位である。

梁フランジ接合部

梁フランジの引張力・圧縮力を柱へ伝える部分で、設計条件に応じて次の方法が採用される。

  • 完全溶け込み溶接
  • 高力ボルト接合

梁ウェブ接合部

せん断力を伝達する部分で、ダイヤフラムや仕口板を介して応力を伝える。

ラーメン構造の仕口

柱梁を剛接合し、建物全体の骨組みに耐力と変形性能を持たせるもので、日本の重量鉄骨建築で最も一般的な方式である。

継手と仕口は位置も機能も異なるが、柱継手は仕口に近い階で設けると応力が集中しやすいため、仕口から離した位置に設けるのが原則である。

柱継手で使用される鋼材(SS400・SN490・STKR400・BCR490など)

柱継手に使われる鋼材は、建築構造用鋼材としてJISで規定されている。

SS400(一般構造用圧延鋼材)

  • 建築物から機械まで幅広く使用される汎用鋼材
  • 引張強さ・降伏強さが規定済み
  • 梁部材などに多用される
  • 比較的加工しやすい

SN490(建築構造用鋼材)

  • 建築用途に特化した鋼材
  • 溶接性能が良く、耐震性を考慮した規格
  • SN400・SN490が代表的
  • 主要構造部で広く採用される

STKR400(角形鋼管)

  • 角形鋼管として多用される
  • コラム柱として使用されることが多い
  • 仕口部はダイヤフラムを用いて応力伝達

BCR490(建築構造用冷間ロール成形角形鋼管)

  • 冷間成形により高い強度を確保
  • コラム柱への採用が多い
  • 耐力壁フレームなどに用いられる

柱継手では、継手部が母材と同等以上の性能を満たす必要があるため、継手部材の材質・溶接方法・板厚が厳密に管理される。

溶接による柱継手の構成

柱の継手は、主に溶接継手が採用される。これは、柱材が縦方向の軸力や曲げモーメントを確実に伝える必要があるためである。

完全溶け込み溶接

  • 母材どうしが完全に一体化する溶接
  • 鉄骨柱継手の主流
  • 内部欠陥をUT(超音波探傷試験)で確認する

開先形状

開先形状にはV開先・K開先・X開先などがあり、溶接施工性に合わせて設計される。

隅肉溶接

  • 補助的な接合部
  • 過度なアンダーカットを避ける必要がある

柱継手は、溶接長さ・開先形状・溶接材料など、JIS Zなどの規格にもとづいて厳密に施工される。

ダイヤフラム構造(内ダイヤ・外ダイヤ)

コラム柱の仕口部には、ダイヤフラムと呼ばれる板を設ける。梁の応力を確実に柱へ伝達するためのもので、JASS6や鉄骨工事技術指針に記載されている一般的な構造である。

内ダイヤフラム

  • コラム内部に設置
  • 見た目がすっきり
  • 施工には内部溶接が必要

外ダイヤフラム

  • コラムの外側に取り付ける
  • 外観にダイヤフラムが見える
  • 溶接施工がしやすい
  • 厚板が使われることが多い

ダイヤフラムは、梁フランジ・ウェブからの応力をコラム柱へ伝えるための重要構成要素である。

裏当て金の役割と使用条件

完全溶け込み溶接を確実に行うため、継手部に裏当て金を使用する場合がある。

裏当て金の目的

  • 溶接裏面の溶け込みを確保
  • 溶接時の形状保持
  • 溶接金属の落下防止

裏当て金は、溶接後に残す場合と撤去する場合がある。これは設計方針・構造形式によって決まる。

梁接合部との関係(仕口条件)

柱と梁の仕口では、次の条件などを基に構造設計される。

  • 梁フランジの応力
  • 梁ウェブのせん断
  • 梁材質(SS400・SN490)
  • コラム柱(STKR400・BCR490)

スカラップ開先は、溶接ルートの確保と施工性に必要だが、梁フランジ端部の耐力低下につながるため、不要な箇所には設けないのが原則である。

超音波探傷試験(UT)の概要

柱継手など、完全溶け込み溶接を行った部位は、超音波探傷試験(UT)によって内部欠陥の有無を確認する。

UTで検出される代表的な欠陥は次のとおりである。

  • 溶け込み不足
  • スラグ巻き込み
  • 割れ
  • 欠陥の連続(線状欠陥)

UTの合否判定は、一般にJIS Z 3060などで規定される。

施工時の注意点(隅肉溶接・アンダーカットなど)

隅肉溶接の不足

脚長不足・溶接長不足は応力集中の原因になる。

アンダーカット

溶接溝が削り取られる欠陥で、疲労耐久性を低下させる。

溶接後の外観検査

表面割れの有無、ビード形状、スパッタの清掃状況などを確認する。

熱影響部(HAZ)

溶接による材質変化が起こるため、規格に基づく適切な管理が必要である。柱継手は鉄骨構造でも重要部の一つであり、適切な施工管理と検査が不可欠である。

まとめ|安全で信頼性の高い柱継手を実現するために

柱継手は、建物の安全性に直結する最重要部位であり、多くの技術要素が関わる。

  • 材料(梁SS400・SN490等、柱STKR400・BCR490等)
  • 仕口構造(内ダイヤ・外ダイヤ)
  • 完全溶け込み溶接
  • 裏当ての扱い
  • 超音波探傷試験
  • 隅肉溶接やアンダーカットへの注意

正しい知識にもとづき、構造設計・工場加工・現場施工・検査を適切に行うことが、安全で耐久性の高い鉄骨建物の実現につながる。