目次
- 継手とは何か|鉄骨柱における基本概念
- 柱仕口の種類と構造
- 柱継手で使用される鋼材(SS400・SN490・STKR400・BCR490など)
- 溶接による柱継手の構成
- ダイヤフラム構造(内ダイヤ・外ダイヤ)
- 裏当て金の役割と使用条件
- 梁接合部との関係(仕口条件)
- 超音波探傷試験(UT)の概要
- 施工時の注意点(隅肉溶接・アンダーカットなど)
- まとめ|安全で信頼性の高い柱継手を実現するために
継手とは何か|鉄骨柱における基本概念
鉄骨構造における「継手(つぎて)」とは、鉄骨部材を長手方向に継ぎ合わせる接合部のことを指す。特に柱は建物の主要構造部であり、1本の鋼材だけで全層を連続させることが困難なため、一定階ごとに継手を設けるのが一般的である。
継手は、次のような条件によって位置が決定される。
- 建方工程の区切り
- 鋼材の運搬可能寸法
- 工場加工の限界長
- クレーン能力など施工条件
鉄骨柱の継手は、構造性能を左右する重要部位であるため、施工方法・溶接種類・材料・検査などが細かく規定されている。
また、継手は「工場継手」と「現場継手」の2種類に分けられる。工場継手は品質が安定しやすいが、運搬寸法の制約を受ける。一方、現場継手は施工環境の影響を受けやすく、施工管理が特に重要となる。
柱仕口の種類と構造
「仕口(しぐち)」とは、柱と梁が交わる接合部を指す。柱仕口は、梁の応力を柱へ適切に伝達するための構造であり、建物の剛性・耐震性を左右する重要部位である。
梁フランジ接合部
梁フランジの引張力・圧縮力を柱へ伝える部分で、設計条件に応じて次の方法が採用される。
- 完全溶け込み溶接
- 高力ボルト接合
梁ウェブ接合部
せん断力を伝達する部分で、ダイヤフラムや仕口板を介して応力を伝える。
ラーメン構造の仕口
柱梁を剛接合し、建物全体の骨組みに耐力と変形性能を持たせるもので、日本の重量鉄骨建築で最も一般的な方式である。
継手と仕口は位置も機能も異なるが、柱継手は仕口に近い階で設けると応力が集中しやすいため、仕口から離した位置に設けるのが原則である。
柱継手で使用される鋼材(SS400・SN490・STKR400・BCR490など)
柱継手に使われる鋼材は、建築構造用鋼材としてJISで規定されている。
SS400(一般構造用圧延鋼材)
- 建築物から機械まで幅広く使用される汎用鋼材
- 引張強さ・降伏強さが規定済み
- 梁部材などに多用される
- 比較的加工しやすい
SN490(建築構造用鋼材)
- 建築用途に特化した鋼材
- 溶接性能が良く、耐震性を考慮した規格
- SN400・SN490が代表的
- 主要構造部で広く採用される
STKR400(角形鋼管)
- 角形鋼管として多用される
- コラム柱として使用されることが多い
- 仕口部はダイヤフラムを用いて応力伝達
BCR490(建築構造用冷間ロール成形角形鋼管)
- 冷間成形により高い強度を確保
- コラム柱への採用が多い
- 耐力壁フレームなどに用いられる
柱継手では、継手部が母材と同等以上の性能を満たす必要があるため、継手部材の材質・溶接方法・板厚が厳密に管理される。
溶接による柱継手の構成
柱の継手は、主に溶接継手が採用される。これは、柱材が縦方向の軸力や曲げモーメントを確実に伝える必要があるためである。
完全溶け込み溶接
- 母材どうしが完全に一体化する溶接
- 鉄骨柱継手の主流
- 内部欠陥をUT(超音波探傷試験)で確認する
開先形状
開先形状にはV開先・K開先・X開先などがあり、溶接施工性に合わせて設計される。
隅肉溶接
- 補助的な接合部
- 過度なアンダーカットを避ける必要がある
柱継手は、溶接長さ・開先形状・溶接材料など、JIS Zなどの規格にもとづいて厳密に施工される。
ダイヤフラム構造(内ダイヤ・外ダイヤ)
コラム柱の仕口部には、ダイヤフラムと呼ばれる板を設ける。梁の応力を確実に柱へ伝達するためのもので、JASS6や鉄骨工事技術指針に記載されている一般的な構造である。
内ダイヤフラム
- コラム内部に設置
- 見た目がすっきり
- 施工には内部溶接が必要
外ダイヤフラム
- コラムの外側に取り付ける
- 外観にダイヤフラムが見える
- 溶接施工がしやすい
- 厚板が使われることが多い
ダイヤフラムは、梁フランジ・ウェブからの応力をコラム柱へ伝えるための重要構成要素である。
裏当て金の役割と使用条件
完全溶け込み溶接を確実に行うため、継手部に裏当て金を使用する場合がある。
裏当て金の目的
- 溶接裏面の溶け込みを確保
- 溶接時の形状保持
- 溶接金属の落下防止
裏当て金は、溶接後に残す場合と撤去する場合がある。これは設計方針・構造形式によって決まる。
梁接合部との関係(仕口条件)
柱と梁の仕口では、次の条件などを基に構造設計される。
- 梁フランジの応力
- 梁ウェブのせん断
- 梁材質(SS400・SN490)
- コラム柱(STKR400・BCR490)
スカラップ開先は、溶接ルートの確保と施工性に必要だが、梁フランジ端部の耐力低下につながるため、不要な箇所には設けないのが原則である。
超音波探傷試験(UT)の概要
柱継手など、完全溶け込み溶接を行った部位は、超音波探傷試験(UT)によって内部欠陥の有無を確認する。
UTで検出される代表的な欠陥は次のとおりである。
- 溶け込み不足
- スラグ巻き込み
- 割れ
- 欠陥の連続(線状欠陥)
UTの合否判定は、一般にJIS Z 3060などで規定される。
施工時の注意点(隅肉溶接・アンダーカットなど)
隅肉溶接の不足
脚長不足・溶接長不足は応力集中の原因になる。
アンダーカット
溶接溝が削り取られる欠陥で、疲労耐久性を低下させる。
溶接後の外観検査
表面割れの有無、ビード形状、スパッタの清掃状況などを確認する。
熱影響部(HAZ)
溶接による材質変化が起こるため、規格に基づく適切な管理が必要である。柱継手は鉄骨構造でも重要部の一つであり、適切な施工管理と検査が不可欠である。
まとめ|安全で信頼性の高い柱継手を実現するために
柱継手は、建物の安全性に直結する最重要部位であり、多くの技術要素が関わる。
- 材料(梁SS400・SN490等、柱STKR400・BCR490等)
- 仕口構造(内ダイヤ・外ダイヤ)
- 完全溶け込み溶接
- 裏当ての扱い
- 超音波探傷試験
- 隅肉溶接やアンダーカットへの注意
正しい知識にもとづき、構造設計・工場加工・現場施工・検査を適切に行うことが、安全で耐久性の高い鉄骨建物の実現につながる。


